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「対象年齢」と「遊び方の余白」

意外と難しい「対象年齢の幅」の設定

子ども向けのサービスやコンテンツを制作していると、意識せざるをえないのが対象年齢です。大人であれば、23歳と25歳でほとんど出来ることに差はありませんが、子どもだとそうはいきません。子どもは未成熟で成長の速度もはやく、3歳と5歳では知能的にも身体的にも出来ることが大きく異なり、5歳では問題なく利用できるものが、3歳だと全く使えなかったり、ということが当たり前のように起こります。

かといって、「じゃあ3歳でも難なく利用できるようにレベルを合わせて、コンテンツを最適化しよう!」となると、5歳には物足りなく感じるかもしれないし、8歳になると幼稚すぎて見向きもされないという可能性も出てきます。

ごく狭い範囲に限定された対象年齢を設定する場合はあまり問題になりませんが、オープンスペースに設置するコンテンツなんかだと「3歳くらいから小学校中学年くらいまでを対象年齢として設定したいなぁ」という要望は現実的にも結構あり、遊んでくれる子ども達の知能レベル・身体レベルに大きな開きがあることを前提としたコンテンツを考えなければならないケースは少なくありません。

「遊び方の余白」という考え方

そこで重要になってくるのが「遊び方の余白」という考え方です。
「遊び方の余白」の設定はより「遊具的」につくるか、より「ゲーム的」につくるかと言い換えることができます。

上の表のように、コンテンツを「遊具的」につくると子どもたちの創造性に遊び方を委ねることができるため、対象年齢を広く設定することが可能になります。
公園の遊具を想像してもらうとわかりやすいかもしれません。例えば、砂場に規定された遊び方はありませんが、子どもたちは自分たちで砂場を活用する遊びを作り出して楽しんでいます。年齢層に応じた遊び方を、子どもたち自身が考えることができる余地をコンテンツに残しておく、という感じです。
ただし、明確な遊び方の規定がない分、プリミティブな遊びになってしまう傾向が強く、その遊びを通じて、狙ったある一つの目的を達成させるというような場合は不向きです。

一方、コンテンツを「ゲーム的」につくると、そこにはルールの規定が必要になるため、それを理解できるだけの知識レベルや、成果を上げるための身体的・知能的なレベルを子どもたちに求める事になり、対象年齢は限定されていきます。
しかし、複雑な文脈やストーリーの伝達等には、とても向いている作り方だと思います。

場所や目的に応じて余白の度合いを設定する

「遊具的」に作ること「ゲーム的」に作ることの、どちらが良くて、どちらが悪いという事はもちろんなく、コンテンツが使われる場所や文脈に応じた対象年齢設定に相応しい余白の持たせ具合を考えていく事が必要です。
( オープンスペースのコンテンツだと、余白が多い方が良いなと思いますし、逆に家庭とか教室なんかのクローズドで、かつ参加メンバーが固定されていたり、何度も触れることができるものなんかは、ゲーム的に作るほうが効果的なケースが多いと個人的には感じています )

対象年齢は企画の初期に決まっていることが割と多いと思うので、まだアイデアレベルの時点から、3歳ならこう遊べるな、5歳ならこういう遊び方をすると楽しいかも、8歳だったらこういうチャレンジが出来ると熱中しそう、といった様に同じコンテンツの中でも年齢に応じた遊び方を具体的に想像してみるのがオススメです。「5歳でもあそべるだろう」という考え方よりも、「5歳ならこうやって遊ぶともっと楽しいよな」という視点の方が、より子ども達が楽しめるコンテンツになっていくと思っています。

そして具体的な形になってきたら、なるべく早い段階で子どもたちに遊んでもらって、規定した年齢層の子ども達が心から楽しめているか、確認できると更によいです。
( 子どもたちの創造力はすごいので、全然意図していなかった面白い遊び方を発見できるケースもあって、大人だけでウンウン考えるより、早いうちに子どもに実際につかってもらうのは本当にオススメしたい )

この考え方はアトラクション的なものだけではなく、子ども向けのアプリやゲームをはじめ、いろんな所に応用ができるので、子ども向けのコンテンツ制作に関わっている人は是非意識をしてみてほしいと思います。

 

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